四国横断自動車道(阿南市下大野地区)橋梁下部工事

四国横断自動車道(阿南市下大野地区)橋梁下部工事

【徳島河川国道事務所 関連企画】

定置式水平ジブクレーンを活用した建設現場の更なる生産性向上と働き方改革を目指した取組

四国横断自動車道(阿南市下大野地区)橋梁下部工事
株式会社亀井組 監理技術者 脇坂 行弘

写真-1 定置式水平ジブクレーン施工事例
※四国横断自動車道(阿南市下大野地区)

1.はじめに

定置式水平ジブクレーンは、欧州諸国では広く普及・使用されているクレーンであり、下記のような特徴を有する。

・置き基礎形式であり、建設現場に常設され、いつでもクレーンが使用できる作業環境を構築できる。
・一度設置してしまえば、クレーン進入路が不要であり設置面積がコンパクトである。
・水平ジブを有し、吊り荷の水平移動はマストの旋回とトロリーの横行で行うため、運転が比較的容易である。
・稼働時にジブが傾斜しないため、構造物側近にクレーンを据え付けることができ、設置位置の選択肢が広い。
・運転者はリモコンを用いて吊り荷近傍で周囲の状況を目視確認しながら操作でき死角がない。

当橋梁下部工事では、上記の特徴を有する定置式水平ジブクレーンを活用することにより、建設現場における作業環境の改善を行い、更なる生産性向上と働き方改革を目指した取り組みを実施している。

2.定置式水平ジブクレーンによる物的労働生産性

当現場では、物的労働生産性の向上率を具体的に数値化するため同種同規模の構造物(橋脚)工事において定置式水平ジブクレーンとラフテレーンクレーンとの比較を行った。比較には型枠工、鉄筋工の物的労働生産性を対象とし結果を表-1に示す。(※各技能班による作業の能力差が生じないように同一技能班での作業とした。)ここで物的労働生産性を「生産量(m2、t)/労働投入量(人×時間)」と定義した。生産量(m2、t)は契約数量とし、労働投入量(人×時間)は15分単位で作業内容及び時間を記録した工事日報システムから取得した。表-1より、定置式水平ジブクレーンを使用した場合、物的労働生産性が20~29%向上していることが分かる。

表-1 当現場における物的労働生産性の比較

この要因として、いくつか考えられるが、とくに制約がある中で計画性をもって最大限に利点を活かした配置計画が大きい。構造物と定置式水平ジブクレーンを軸とし資材置場の位置や広さ・配置・運搬の導線を考慮した計画が適していたと考えられる。定置式水平ジブクレーン使用現場の現場配置を図-1に示す。

図-1 四国横断自動車道(阿南市下大野地区)における橋梁下部工事の現場配置

3.技能労働者の聞き取り調査及び現場監督の感想

定置式水平ジブクレーンを使用した技能者2名を対象に、インタビュー形式で聞き取り調査を行った。調査結果および現場監督の感想を表-2に示す。結果から、従来のラフテレーンクレーンと比較して、簡便な操作、常設ゆえの作業工程の自由度の増加や作業空間の増加という利点を感じていることが分かる。加えて、従来のラフテレーンクレーンを使用していたときよりも常時作業が出来る安心感や安全な環境構築ができている実感を得られていることが分かり、現場の安全性・利便性向上が図られていたと考えられる。

4.おわりに

日本国内で定置式水平ジブクレーンを更に有効活用するためには、従来の現場内運搬の常識(人力による運搬)を飛び出して、クレーン設置位置を含めた現場内配置の計画、資機材の輸送や保管方法、資機材を運搬するための装置等、日本での施工方法に合わせた施工計画・施工方法を新たに見いだす必要がある。

また、定置式水平ジブクレーンには、リース料をはじめ、運搬・組立・解体に費用を要するなど広範囲に点在する現場、短期間で完了する現場には不向きなどの課題もある。引き続き、ジブクレーンを活用することで生まれる付加価値の探求・追求を進めるとともに、安価な輸送方法の検討、ジブクレーン維持管理技術者の育成などの問題に取り組む必要があると考えられる。

四国地方は、全国よりも人口減少が25年、高齢化が10年から15年早く進んでおり、担い手確保は喫緊の課題となっている。引き続き、定置式水平ジブクレーンを積極的に活用するための施工計画・施工方法を検討していくと共に、現場展開を図っていくことで更なる建設業の生産性向上と働き方改革を目指していきたい。

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