寄稿/国土交通省 北海道開発局長 倉内 公嘉

寄稿/国土交通省  北海道開発局長 倉内  公嘉

土木の日に寄せて

――― 北海道の安全・安心な国土づくり

国土交通省 北海道開発局長

倉内 公嘉


令和元年10月の台風第19号による被害からの復旧・復興の最中、本年も7月3日から8日にかけての大雨(令和2年7月豪雨)により、熊本県をはじめ各地にて甚大な被害が発生しました。お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

平成23年、東日本大震災という未曾有の大災害を目の当たりにしました。その後も全国各地で自然災害が頻発し、大きな被害が発生するとともに、更に南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の発生が懸念されています。

このような状況を踏まえ、平成25年に制定された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化法」に基づき、国においては国土強靱化に関する施策の推進に関する基本的な計画を策定するとともに、地方公共団体においては国土強靱化地域計画の策定(改定)と、当該計画に基づく耐震化対策や避難体制整備等の取組みが進められています。また、国土交通省においては、今後の気候変動の影響による水災害の更なる頻発化・激甚化が懸念される中、省として総力を挙げて防災・減災に取り組むべく「国土交通省 防災・減災対策本部」が今年1月に設置されるとともに、7月には「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」が取りまとめられたところです。

北海道では、平成28年の大雨、平成30年の北海道胆振東部地震により甚大な被害が発生したことは記憶に新しいところです。また北海道には、全国の活火山の約2割が存在するとともに、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に関し新たな津波高等の検討結果が内閣府より公表される(本年4月)等、自然災害の高い発生リスクを抱えています。

H28年台風第10号等の大雨による被害

H30年北海道胆振東部地震による被害

 

さて、第8期北海道総合開発計画(計画期間:平成28年~令和7年度)(以下、8期計)は、平成28年以降おおむね10年間における北海道開発の展開の方向と施策を示しています。具体的には、「世界の北海道」をキャッチフレーズに、「人が輝く地域社会」「世界に目を向けた産業」及び「強靱で持続可能な国土」の3つの目標を掲げ、各種施策を展開しています。その基本的な考えは、“今後進む急速な人口減少の時代にあっても世界と競争し得るポテンシャルがある「食」「観光」を戦略的産業”とし、“農林水産業、観光等を担う「生産空間」を支え「世界の北海道」を目指す”ものです。

防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策の取組事例

 8期計の目標の一つである「強靱で持続可能な国土」の着実な推進を図るため、北海道開発局では、関係機関との連携の下、治水・海岸事業や高規格幹線道路等の交通ネットワーク等の整備、被害を受けた施設等の早期の復旧、各種災害訓練の実施等を通じた地方公共団体との連携強化と地域住民の防災意識の向上、道内のみならず全国各地を含む被災市町村へのTEC-FORCE(緊急災害対策支援隊)の派遣等ハード・ソフト両面の施策に取り組んでいるところです。更に、重要インフラ緊急点検結果を踏まえた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(3か年緊急対策)の着実な推進に努めるとともに、今年10月には国立大学法人北海道大学広域複合災害研究センターとの間にて連携協定を締結し、道内の広域複合災害にも対応した研究・技術開発と、これを支える人材の育成にも取り組みます。

TEC-FORCE活動状況(令和2年7月豪雨)

 他方、この8期計策定後、前述の自然災害の頻発化等に加え、今年1月には新型コロナウイルス感染症が拡大し、全国・道内の人々の生活や、戦略的産業である道内の「食」「観光」等に甚大な影響を及ぼし、未だその影響が続いている状況にあります。このような厳しい状況の下、今年は8期計策定から5年の節目を迎え、現在、国土審議会北海道開発分科会において8期計の中間点検が行われています。この中間点検の議論においては、“感染症による我が国経済への被害は甚大、極めて厳しい状況”との認識の一方で、“感染症の影響を受けても、「食」や「観光」の分野の北海道の強み、北海道の魅力が失われたわけではない”“時期を逸することなく施策を進め、ポスト・コロナの新しい日常を先導する地域を創る”との考えが示されています。

8期計中間点検報告(案)(抜粋)

 北海道開発局では、最終的な中間点検報告に基づき関係施策を実施していくとともに、「気候変動への対応を含む防災・減災対策は、差し迫った災害リスクに対して強靱な経済社会構造を構築するとともに、経済の回復を後押しする上で欠かせない取組であり、地域経済の活性化にも寄与」(国土交通省 防災・減災対策本部)との考えの下、北海道の安全・安心な国土づくりに向け、関係機関と緊密に連携し、関係するハード・ソフト施策を推進することとしています。引き続き、皆様のご理解、ご支援、ご協力をよろしくお願い致します。

北海道開発局カテゴリの最新記事