寄稿/北海道開発局 開発監理部 次長 石川 伸

寄稿/北海道開発局 開発監理部 次長 石川 伸

土木の日に寄せて

--安心・安全な北海道の国土づくり

北海道開発局 開発監理部
次長 石川 伸

 

第8期北海道総合開発計画では「人が輝く地域社会の形成」「世界に目を向けた産業の振興」「強靱で持続可能な国土の形成」を目標に掲げ、北海道の強みである「食」と「観光」を戦略的産業として育成し、豊富な地域資源とそれに裏打ちされたブランド力など北海道が持つポテンシャルを最大限に活用することにより、「世界の北海道」を目指して各種事業等に取り組んでおります。目標の一つである「強靱で持続可能な国土」については、令和2年12月に「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、北海道開発局においても「国土強靭化基本計画」等に基づき、令和3年度から令和7年度までの5か年に必要となる事業規模等を定め、インフラ整備をはじめとするハード・ソフトの両輪での取組を重点的かつ集中的に進めているところです。

 

第8期北海道総合開発計画中間点検報告書(概要)

 

新たな広域道路ネットワーク図(北海道ブロック版)

北海道において、初の震度7を記録した平成30年9月の北海道胆振東部地震、四つの台風の上陸又は接近により道内各地で甚大な被害をもたらした平成28年8月の北海道大雨災害が発生、このほかにも前線や低気圧による風水害、土砂災害、大雪を含む雪害など、災害が激甚化・頻発化しております。北海道開発局では、北海道胆振東部地震の被災からの早期の復旧・復興を進めるとともに、「食」と「観光」を担う生産空間の維持・発展等の北海道型地域構造の保持・形成及び強靭な北海道の実現等を着実に推進するため、高規格道路整備等による道路ネットワーク機能強化や港湾・空港・漁港のアクセス性、利便性、耐震性等の向上等の社会資本整備や予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた所管施設等の老朽化対策を進めてまいります。

具体的には、大きな被害を出した平成28年台風を踏まえ、北海道と北海道開発局の共同で委員会を立ち上げ、気候変動による将来の影響を科学的に予測し、具体的なリスク評価を基に治水対策等の検討を行うとともに、気候変動等に伴う水害・土砂災害の激甚化・頻発化に備え、流域に関わるあらゆる関係者が流域全体で取り組む「流域治水」を推進するため、道内全ての一級水系で「流域治水プロジェクト」を推進してまいります。

流域治水のイメージ

さらに、昨冬は札幌市中央区の24時間降雪量が60cmに達し、1999年の統計開始以来の記録を更新する等、道内各地で記録的な大雪、暴風雪に見舞われ、公共交通機関の運休や道路の通行止めが発生し、道内交通に多大な影響が生じました。北海道開発局では、このような大雪、暴風雪に備え、冬期の人命被害の回避や経済被害の最小化を図るため、関係機関が連携してハード・ソフト組み合わせた対策を推進してまいります。その対策の一つとして、暴風雪等での長時間の国道の通行止めが頻発していることや、オペレーターの高齢化や担い手不足の課題を踏まえ、持続可能な道路除雪に向けて産官学民が幅広く連携して取り組むプラットフォーム「i-Snow」を平成29年3月に設立し、準天頂衛星「みちびき」や「高精度3Dマップデータ」を活用した除雪車の運転支援システムや除雪作業の自動化の実装を目指し、実証実験を通した技術検討を進めております。

i-Snow

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震については、北海道が最大クラスの津波を想定して令和3年7月に公表した津波浸水想定や、その結果を用いて令和4年7月に公表された被害想定を踏まえ、津波浸水想定区域等における対策の検討を進めてまいります。さらに、令和4年5月に改正された「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」も踏まえ、国内でも特に厳しい積雪寒冷地特有の課題を抱え、甚大な被害が想定されている北海道の地震・津波等の大規模災害に備えるため、「5か年加速化対策」に加え、「北海道特定特別総合開発事業推進費」も活用した機動的・重点的な地震・津波対策を強力に推進してまいります。

今後も北海道開発局では、インフラ分野のDX、カーボンニュートラルなどの新たな潮流の変化を踏まえ、北海道が世界水準の価値創造力を発揮し、我が国全体の発展をリードしていく地域社会を形成するため、ハード・ソフトの様々な取組により、強靭な社会資本整備等を進めてまいります。

 

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