寄稿/宮城県 仙台地方ダム総合事務所長 千葉 周二

寄稿/宮城県 仙台地方ダム総合事務所長 千葉 周二

地域の期待を背負って川内沢ダム本体工事に着工

―― 仙台空港 臨空工業団地 名取市街地を洪水から守る

宮城県 仙台地方ダム総合事務所長 千葉 周二

 

名取川と阿武隈川の間に開けた平地は「名取耕土」と呼ばれ、増田川・川内沢川・五間堀川・志賀沢川などの中小河川によって形成された沖積平野です。この「名取耕土」の中央部に位置する川内沢川は、その源を丘陵地・五社山に発し、名取市街地、仙台空港の臨空工業団地を流下し南貞山運河を経由して広浦で増田川に合流する流域面積17.3km²、流路延長11.9kmの一級河川です。

川内沢川は、河道が狭小のため古くより度々洪水被害を受けており、このため昭和42年より「国営名取川水利事業」として治水安全度の向上が図られてきました。

しかしながら、洪水被害はその後も頻発し、昭和61年8月の台風10号、平成6年9月の集中豪雨の際には流域に甚大な被害をもたらしました。

また、近年では流域である名取市の開発はめざましく、仙台空港、臨空工業団地、宅地開発など都市化が著しく進み、平成27年9月の関東・東北豪雨や令和元年10月の東日本台風による浸水被害を受けており、洪水に対する安全度の早期向上が喫緊の課題となっています。

このため、ダムによる洪水調節で地域を洪水から防御するとともに、名取市の耕地等の既得取水の安定的供給及び河川環境の保全を図るため名取市愛島笠島地内に治水ダムとして川内沢ダムの建設を行っています。

川内沢ダムは、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を目的とした、堤高39.7m、堤頂長145.0m、堤体積54,000m³の重力式コンクリートダムで、洪水調節は、ダム計画地点における洪水時の流量40m³/sのうち37m³/sの洪水調節を行い3m³/sを下流に放流します。

その結果、館腰基準点の流量を115m³/sから80m³/sに低減し、沿川地域の洪水被害の軽減を図ります。

また、流水の正常な機能の維持として、10年に1度発生すると考えられる渇水に対しても、安定的なかんがい用水の確保と維持用水を補給するなど、川内沢ダムは治水・利水・環境への配慮とともに、地域振興や観光資源としての取組などにも大きな役割を担うものと期待しています。

3月にはダム本体工事に着手し、現在は基礎掘削に向けた転流工を施工しております。地域からも早期完成を待ち望まれており、令和7年度の完成に向け着実に工事を進めてまいります。

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