寄稿/国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所長 鈴木学

寄稿/国土交通省  九州地方整備局 熊本河川国道事務所長 鈴木学

災害に強い九州の循環型交通ネットワークを形成する「九州中央自動車道」

国土交通省 九州地方整備局
熊本河川国道事務所長

鈴木 学


はじめに

熊本河川国道事務所は、一級河川白川及び緑川の改修や維持管理、熊本県内の国道3号、国道57号及び国道208号、さらに九州中央自動車道といった高規格幹線道路の改築や維持管理等を行っており、本稿では、九州中央自動車道について事業概要などを紹介します。

図1 九州中央自動車道の事業概要

概要

九州中央自動車道は、九州のほぼ中央を横断し熊本県上益城郡嘉島町から宮崎県延岡市に至る延長約95kmの高規格幹線道路であり、九州縦貫自動車道と東九州自動車道を結び、これら一体となって九州の循環型高速交通ネットワークを形成します。
災害等緊急時における代替路線の確保、周辺観光地間の移動時間短縮と走行向上による観光地間の交流・連携強化の効果が期待されています。
熊本河川国道事務所では、熊本県内の「山都中島西IC~矢部IC(仮)」、「蘇陽五ヶ瀬道路」の改築事業、また、矢部IC(仮)~蘇陽IC(仮)間の調査を進めています。

(1)「山都中島西IC~矢部IC(仮)」

九州中央自動車道の起点側に位置する「嘉島JCT~矢部IC(仮)」は、延長約23kmの高速自動車国道であり、平成11年に事業着手し、平成26年3月に嘉島JCT~小池高山ICの延長1.8㎞、平成30年12月に小池高山IC~山都中島西ICの延長10.8㎞が供用し、現在山都中島西IC~矢部IC(仮)までの延長10.4㎞を整備しています。
「山都中島西IC~矢部IC(仮)」の本線は、土工と橋梁8橋で構成されており、令和2年7月時点で、土工は約6割の進捗、橋梁8橋は全て着工済みです。
橋梁8橋の進捗は、北中島橋(延長175m)、小皿木橋(延長44m)、御船川橋(延長117m)千滝川橋(延長211m)大野川橋(延長99m)の上・下部工が完了し、現在は滑川橋(延長67m)の上部工、城ノ尾第一橋(延長102m)の上・下部工、城ノ尾第二橋(延長31m)の下部工施工を進めています【橋梁名は全て仮称】。

図2 山都中島西IC~矢部IC(仮)整備概要

(2)「矢部IC(仮)~蘇陽IC(仮)」

「矢部IC(仮)~蘇陽IC(仮)」は、令和元年9月より事業化の前段階となる「計画段階評価」の手続きに着手し、自動車専用道路として約15kmの概略ルート・構造の検討を進めております。

 

図3 矢部IC(仮)~蘇陽IC(仮) 対象区間位置図

(3)「蘇陽五ヶ瀬道路」

「蘇陽五ヶ瀬道路」は、蘇陽IC(仮)から五ヶ瀬東IC(仮)に至る延長7.9㎞の自動車専用道路であり、令和2年度に事業着手しました。
九州中央自動車道の一部となる本道路は、国道218号の平面線形及び縦断勾配の不良個所を回避するとともに、大規模災害時には国道218号の代替路となり、宮崎県北地域と熊本方面を結ぶ唯一の緊急輸送道路としての機能確保に大きく寄与する道路です。

図4 蘇陽五ヶ瀬道路の整備状況

最後に

現在、事業中の「山都中島西IC~矢部IC(仮)」は、国道445号や国道218号で、災害等により平成19年~平成29年で計21回の全面通行止めが発生し、熊本市~山都間の通勤・通学、緊急医療活動に影響を及ぼしました。また、平成28年4月の熊本地震では、国道445号において23ヶ月の通行止めが発生し、大型車の迂回は通常の2倍となる180分を要しました。
今後の九州中央自動車道の開通延伸により、発生が想定される南海トラフ地震などの大規模災害発生時の代替機能が確保されます。
今後も地域の方々のご理解・ご協力を頂き関係機関と一体となって、残る区間の早期開通に向け、引き続き全力で取り組んで参ります。

図5 災害時における交通流動の変化

図6 災害時に強いネットワーク形成(九州東進作戦)

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