寄稿/国土交通省 近畿地方整備局 豊岡河川国道事務所 所長 南 知之

寄稿/国土交通省  近畿地方整備局 豊岡河川国道事務所  所長 南  知之

円山川流域の治水事業について

国土交通省 近畿地方整備局
豊岡河川国道事務所 所長 南 知之

1.はじめに

円山川は、源を兵庫県朝来市生野町円山(標高640m)に発し、大屋川、八木川、稲葉川等の支川を合わせて北流し、豊岡盆地にて出石川、奈佐川等を合わせ日本海に注ぐ幹川流路延長約68km、流域面積約1,300km2の一級河川です。

上流部に高峻な山地はなく、氷ノ山(標高1,510m)をはじめとする標高1,000m級の山地が連なっており、約84%を山地が占め、残る約16%が豊岡盆地等の平地となっています。

流域内には、約14万人の人々が暮らしており、下流の豊岡市域には半数以上の約8万人が集中しています。

円山川水系の河川の河床勾配を見ると、本川の上中流区間や支川が急であるのに比べ、本川の河口から出石川合流付近までは近畿の他の一級河川と比べても非常に緩くなっています。

その一方で、緩やかな河床勾配の下流部は感潮域となっており、干潟やヨシ原、ワンドなど円山川の河川環境を特徴づける要素の一つである湿地環境が分布し、コウノトリをはじめとする様々な生物を育む国際的にも重要な湿地として「円山川下流域・周辺水田」がラムサール条約湿地に登録されています。

円山川決壊地点の状況(河口から13.2km:H16.10.21撮影)

2.台風23号による被害

美しい自然と景色がある円山川ですが、昔から洪水の被害を何度も起こしてきました。特に平成16年10月洪水(以下台風23号)は近年で最も大きな被害をもたらしました。

台風23号は、円山川流域に2日雨量で278㎜の降雨をもたらし、立野観測所では観測開始以降、最高水位を記録しました。この豪雨により、死者7人、負傷者51人、浸水家屋7,944戸に達する甚大な被害が起こりました。円山川、出石川及び奈佐川の国土交通省管理区間においては、29箇所で越水が発生、円山川、出石川のそれぞれ1箇所で堤防が決壊しました。

この洪水被害を受け、国土交通省豊岡河川国道事務所では、台風23号と同規模の災害が起こった場合でも、再び同じ被害を繰り返さないことを基本方針とし、緊急かつ集中的な円山川の河川改修を実施し、合わせて家屋の床上浸水被害の解消を目標とした 河川激甚災害対策特別緊急事業を実施しました。

さらに平成25年3月には円山川水系河川整備計画を策定し、台風23号と同規模の洪水が発生した場合であっても、全川にわたり家屋棟の浸水被害の軽減を図るための整備を進めています。

メモリアル防災学習会

3.円山川流域治水プロジェクト

近年では地球温暖化に伴う気候変動の影響により、極めて大規模な水災害が発生する懸念が高まっています。その水害リスク増大に備えるため、流域のあらゆる関係者が連携し流域全体で水害を軽減させる「流域治水」へ転換し、関係者の各施策を適切に組合せ効率的・効果的な治水安全度の向上に取り組んでいます。その流域治水を推進するため、令和2年8月26日「円山川流域治水協議会」を設置し、関係者が実施する各施策やロードマップを「円山川水系流域治水プロジェクト」としてとりまとめ、令和3年3月30日に公表しました。引き続き、協議会において情報共有・連携を図り、流域全体による水害対策に取り組んでいきます。

今年度は、ハード対策として豊かな環境を守りつつ下流域の水位低減効果が期待されている中郷遊水地の整備や流下能力の低い無堤地区での堤防整備を行っています。ソフト対策としては、ホームページや携帯電話を利用した雨量・水位・河川監視用カメラ画像などの情報提供や周知を行っています。また、住民の防災基礎知識の修得を目的として専門家によるメモリアル防災学習会の実施や地域防災力向上に資する住民ワークショップなども行っています。

円山川流域をより災害に強い地域にするために、豊岡河川国道事務所ではハード対策、ソフト対策共に充実させるべく進めて参ります。

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