寄稿/淀川河川事務所長 三戸 雅文

寄稿/淀川河川事務所長 三戸  雅文

近年の出水を踏まえた淀川河川事務所の取り組み

 

国土交通省 近畿地方整備局
淀川河川事務所長

三戸 雅文


図-1 淀川の流域図

○はじめに

淀川は幹川流路延長75kmの一級河川で、その源となる滋賀県の山間部に発する大小支川を琵琶湖に集め、大津市から谷となって南流し、桂川と木津川を合せて大阪平野を南西に流れ、途中で神崎川及び大川(旧淀川)を分派して大阪湾に注ぎます。流域面積は8,240km2に及び、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の2府4県に跨がります。

淀川河川事務所は、宇治川(天ヶ瀬ダム下流)、桂川(嵐山下流)、木津川(笠置大橋下流)の三川と、三川合流から大阪湾に注ぐまでの淀川の約112kmを管理しており、護岸整備・河道掘削・維持管理を始め、高規格堤防、河川環境整備、淀川河川公園などの事業に取り組んでいます。

今回は、近年の出水状況とその対策として、淀川河川事務所で取り組んでいる主な事業を紹介します。

○近年の出水状況

平成25年台風18号では、昭和28年台風13号に匹敵する洪水となり、宇治川や桂川で計画高水位を超過した区間がありました。幸いにも破堤等の甚大な被害には至りませんでしたが、桂川では浸水被害が生じました。特に、国内外から多くの観光客が訪れる嵐山地区では、平成25年台風18号の他、平成16年台風23号や平成30年7月豪雨の際の出水による浸水被害で、観光や地元経済への被害が生じています。

 

○平成25年(2013年)洪水

○桂川における河川整備

桂川では、従来より進めてきた大下津地区の引堤工事に加え、平成25年台風18号を契機に、翌年の平成26年から桂川緊急治水対策事業に着手し、これまでに横大路地区などで約100万m3の河道掘削や井堰の撤去等を実施しています。一方、浸水頻度の高い渡月橋左岸上流は平成30年7月豪雨においても、溢水が生じました。溢水対策の実施においては、嵐山地区全体が文化財保護法上の「史跡」及び「名勝」に指定されており、景観等への影響を抑えた対策が課題でした。対策工の立案にあたっては有識者会議や地域の方々の意見を伺いながら検討を進め、令和元年度から可動式止水壁による左岸溢水対策に着手しています。令和3年出水期までに一定の治水効果を発揮させ、意匠工事も含めた完成は令和3年度末を目指しています。

 

大下津地区(京都市伏見区淀水垂地先)

○おわりに

全国各地で災害が頻発し、激甚化している状況を踏まえ、淀川水系においても「流域治水」への転換をめざす流域治水プロジェクトに取り組みます。流下能力の向上や堤防強化等のハード整備と共に、ソフト対策を含めた流域自治体等の関係者との連携のもと、流域の治水対策を進めて参ります。

 

京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場地先

 

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