寄稿/東北地方整備局 酒田河川国道事務所

寄稿/東北地方整備局 酒田河川国道事務所

日本海側の大動脈「日沿道」

―― 山形県庄内地域の安全・安心・快適な地域づくりを支援

国土交通省 東北地方整備局
酒田河川国道事務所長 菅 太

 

はじめに

「日本海沿岸東北自動車道(日沿道)」は、新潟県から山形県・秋田県の日本海側を縦断し、青森県に至る延長約322kmの高規格幹線道路です。災害時における緊急輸送と速達性の確保、第三次救急医療施設へのアクセス改善及び日本海側拠点間の交流・連係強化などの効果が期待されています。酒田河川国道事務所では、山形県内の「朝日温海道路」、「酒田みなと~遊佐」、「遊佐象潟道路」の事業を進めています。

図1 日本海沿岸東北自動車道の事業概要

〔朝日温海道路〕

図2 朝日温海道路の整備概要

 

「朝日温海道路」は、新潟県の朝日まほろばICから山形県のあつみ温泉ICに至る延長40.8kmの自動車専用道路であり、平成25年に事業着手しました。当事務所では新潟県境からあつみ温泉ICまでの延長6.7kmを担当しています。新潟・山形県境の国道7号では、越波による通行止めが頻繁に発生し、豪雨・豪雪時には迂回路の寸断による集落の孤立の可能性もあります。日沿道の整備により、自然災害による交通規制時も代替路が確保されることで、災害に強い道路ネットワークが確保されます。

本区間(6.7km)内には5本のトンネルを計画しており、主な工事としては、最北部に位置する(仮)大岩川トンネルの掘削を進めています。令和2年6月末現在で掘削は約9割、覆工コンクリートは約5割の進捗となっています。

写真1 (仮)大岩川トンネル

写真2 (仮)大岩川トンネル終点側抗口

〔酒田みなと~遊佐〕

図3 酒田みなと~遊佐、遊佐象潟道路の整備概要

「酒田みなと~遊佐」は、現在供用中の酒田みなとICから(仮)遊佐鳥海ICに至る延長12kmの高速自動車道であり、平成21年に事業着手しました。

起点側の一部区間は、最大深さ約40mの軟弱地盤であり、地盤の強度増加と盛土の長期安定を目的とし、「カードボードドレーン工」、「サンドマット工」、「盛土補強工(安定シート敷設)」、「プレロード盛土」等の軟弱地盤対策を実施しています。なお、プレロード盛土の盛立ては、周辺に影響が無いよう約10cm/日の緩速盛土で実施しました。

また、この地域では日本海からの強風による飛砂被害に悩まされており、江戸時代中期以降、長い年月をかけてクロマツが植樹され、防砂林が作りあげられてきました。本事業において、その防砂林の一部を改変することから、保全措置として本線法面等にクロマツを植樹し、防砂林の復元を図ることとしています。

酒田みなとICから(仮)遊佐比子ICまでの延長5.5km区間は令和2年内の開通を目標に、舗装や4橋の床版等の工事を鋭意進めております。

図4 酒田みなと~遊佐の軟弱地盤対策

〔遊佐象潟道路〕

「遊佐象潟道路」は、(仮)遊佐鳥海ICから秋田県の象潟ICに至る延長17.9kmの自動車専用道路であり、平成25年に事業着手しました。当事務所では(仮)遊佐鳥海ICから秋田県境までの延長8kmを担当しており、現在、道路設計、用地調査、用地買収、道路改良工事などを行っております。

最後に

今年開通予定の酒田みなとIC~(仮)遊佐比子ICは物流や観光の面でも大きな期待が持たれています。アクセス性の向上が期待される酒田港は、コンテナ貨物取扱量が年々増加しており、国や県により港の機能強化が進められております。また、「リサイクルポート」(2003年)、「日本海側拠点港」(2011年)に指定以降、リサイクル関連企業の立地も増加しており物流の拠点となっています。日沿道の整備により、酒田港からの高速ネットワークが形成され、更なる物流の効率化と、地域産業の活性化への支援が期待されています。

また、庄内地域には、数多くの観光資源が点在しており、外国人観光客数も増加しております。日沿道の整備によりアクセス性が向上することで、観光周遊エリアの拡大や庄内地域を訪れる観光客の増加が期待されます。

日沿道の整備をはじめとして、今後も災害に強く安心して快適に暮らせる地域づくりのために、地域のみなさんと一緒に事業を進めてまいります。

写真7  日本海沿岸東北自動車道(酒田みなと~遊佐) 酒田みなとIC付近(令和2年2月)

東北地方整備局カテゴリの最新記事