寄稿/国土交通省 東北地方整備局 営繕部

寄稿/国土交通省 東北地方整備局 営繕部

鶴岡第2地方合同庁舎
―― 城下町・鶴岡の「人」と「歴史」と「文化」をつなぐ

国土交通省 東北地方整備局 営繕部

 

鶴岡第2地方合同庁舎 (完成パース)

 

鶴岡第2地方合同庁舎の入居予定官署は、鶴岡税務署、山形地方検察庁鶴岡支部・区検察庁、鶴岡公共職業安定所ですが、現在使用している庁舎の経年による老朽化と、業務の多様化や業務量の増大による狭あい化の問題を解消するため、分散して所在している各官署を集約・立体化した合同庁舎として整備する事業です。

整備にあたっては環境負荷低減対策、高度なバリアフリー化を行うとともに、平成14年7月1日に策定された「鶴岡市シビックコア地区整備計画」の中核施設として、地域連携に取り組んでいます。

着工に当たっては、その整備内容に組み込んできた地域連携の取り組みを整理し、以降の事業計画に反映させています。

建設地は、山形県鶴岡市馬場町の鶴岡市立荘内病院の跡地で、各官署を集約することにより、施設利用者の利便性向上を図るほか、中心市街地の活性化やにぎわいの創出に寄与することを目指しています。

規模・構造は、鉄筋コンクリート造3階建て、延べ面積約3,530㎡で、鶴岡市の車庫及び駐輪場防災倉庫を合築する計画です。

鶴岡市は、平成14年に「鶴岡文化学術交流シビックコア地区整備計画書」を策定し、市役所が立地する街区を中心とした約40.3haを「シビックコア地区」として設定しました。

また、本施設の建設予定地である鶴岡市立荘内病院跡地を中心に、約9.3haをシビックコア地区の核となる施設として、都市基盤整備事業等を重点的に事業化するエリアである「シビックコア地区アクションエリア」とし、これまで都市機能の集積等を進めてきています。

そこで、本施設については、国民が親しめる施設として整備するとともに、国民共通の財産である官公庁施設としての有効活用、玄関ホールの柔軟な利用のほかに駐車場の有効利活用等について検討していくことが求められました。

鶴岡第2地方合同庁舎

一方、このシビックコア地区整備計画が承認されてから、鶴岡市では平成16・17年度に、計6回のワークショップ及び市民フォーラムを開催し、「三の丸地区の景観まちづくりガイドライン」を策定しました。

また、本施設の計画地が面する馬場町五日町線沿道の住民と、建築士等から構成される「馬場町五日町線まちづくり協議会」により、シビックコア地区の顔として、鶴岡公園と一体化した街並み形成を、沿道地権者、国及び市が連携することで空間整備していくための「馬場町五日町線まちづくり協定」が策定されました。

このまちづくり協定に基づき、「計画発意期」、「基本設計開始期」、「基本設計終了期」の計3回にわたって開催されたまちづくり相談会において、東北地方整備局から協議会に対して本施設に関する説明を行いました。
そのほか、本施設は高さが15mを超える4階建て、延べ面積3,530㎡で計画しましたが、計画地が都市計画高度地区に位置していることから、特例許可の申請にあたっては、建築士等の専門家で構成される「コミュニティアーキテクト」に、事前相談を行うことが必要でした。
そこで、まちづくり協議会と併せて本施設に関する説明を行い、様々な視点から多くの改善意見を収集することができました。
例えば、コミュニティアーキテクト及びまちづくり協議会からは、平成30年2月に提出された意見書において、周辺の低層住宅地に配慮し、都市計画高度地区の高さ制限である15m以下に抑えるよう、3階建てへの計画変更が提案されました。

これを踏まえて計画を変更し、3階建て、高さ15m以下に抑えることで、鶴岡の景観特性である周囲の山々の眺望に配慮した設計としました。このような景観特性への配慮は、今後の鶴岡のまちづくりの先導的な考え方となることが期待できます。

そして、3層構成とするとともに、ファサードデザインを分節化する計画としています。

エントランスホール

また、「山の眺望」を意識させ、地域のランドマークとなるデザイン隣接道路側の建物をセットバックさせることで、街路からの眺望に配慮し、眺望軸を建築デザインと空間構成に反映した計画としています。

さらに、意見書では、城下町としての歴史ある鶴岡らしい要素を設計に取り入れてほしいという意見や、近隣に所在する国指定重要文化財である旧風間家住宅 丙申堂と調和するデザインを取り入れてほしいとの意見もありましたので、こうした意見を踏まえて、丙申堂に見られる「通り土間」という空間をモチーフとした、廊下上の土間空間をオープンスペースとして設置することにより、通りににぎわいを生み出すような設計としました。

そして、丙申堂に見られる板塀のデザイン要素を外観に取り入れることで、景観上の調和を図ることとしました。

このほか空間構成としては、入居官署の特性、施設利用者へ開かれた空間とプライバシーを配慮する空間を考慮して、ゾーニングする計画としています。

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