多発する自然災害から地域の安全・安心と発展を支える
―― 北上川水系(下流)・鳴瀬川水系における令和3年度の主要事業
国土交通省 東北地方整備局
北上川下流河川事務所長
石田 和也
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■北上川水系(下流)・鳴瀬川水系の特性
北上川下流河川事務所は、宮城県の県北及び県東部地域を流れる「北上川水系(下流部)」「鳴瀬川水系」の2水系の直轄管理区間の河川事業を担当しています。流域は広大な農地と豊かな水利を生かした東北有数の農作物生産地であり、高速道路や港湾などの交通網整備と連携した自動車工場などの工業も盛んな地域です。
一方、近年は自然災害が多発しており、平成23年3月の東日本大震災による地震や津波により北上川及び鳴瀬川河口部で甚大な被害が発生しました。また、平成27年9月の関東・東北豪雨や令和元年10月の東日本台風による洪水では、低平地帯という鳴瀬川水系吉田川の流域特性により、広範囲かつ長期間にわたる浸水が生じ、地域経済へ繰り返し影響を及ぼしています。
このため、北上川下流及び鳴瀬川沿川地域の社会基盤の形成、良好な水辺環境の保全等を行い、多発する自然災害から地域の安全・安心と発展を支える事業を進めております。
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■北上川水系において予定している主要事業
①日根牛地区堤防整備事業【継続】
北上川左岸登米市日根牛(ひねうし)地区の堤防は幅や高さが不足しているほか、堤外地に家屋が存在しており、平成10年、平成14年、平成19年と立て続けに浸水被害が生じています。この被害軽減を図るため、宮城県・登米市の道路事業等と連携して堤防等の整備を行っています。令和3年度は堤防・道路舗装を実施し、事業の推進を図ります。
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②三輪田地区堤防整備事業【新規】
北上川下流部の洪水処理計画は、登米市津山町柳津地内に位置する分流施設の操作により旧北上川への洪水量全量を北上川に流す計画としております。
一方、分流施設下流部に位置する石巻市三輪田(みのわだ)地区の堤防は高さが不足しており、洪水を受け入れる河道断面を満足していません。このため、堤防の整備を行い、氾濫被害を未然に防止するとともに、あわせて北上川への洪水の分流を実現することにより、旧北上川河口部に位置する石巻市街地の氾濫被害軽減を図るものです。令和3年度より堤防整備に着手し、事業の推進を図ります。
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③鹿又地区堤防整備事業【新規】
旧北上川右岸石巻市鹿又(かのまた)地区の堤防は幅や高さが不足しています。また、一連区間の上下流部には人家等の資産が集中し、堤防決壊等によりひとたび氾濫が生じた場合には、石巻市街地まで浸水が拡大する危険性があります。このため、堤防の整備を行い、氾濫被害を未然に防止するものです。令和3年度より堤防整備に着手し、事業の推進を図ります。
■鳴瀬川水系において予定している主要事業
①吉田川床上浸水対策特別緊急事業【継続】
平成27年9月関東・東北豪雨において、甚大な被害を受けた吉田川上流部で、関東・東北豪雨と同規模の洪水に対して床上浸水被害を解消するため、遊水地群の整備や河道掘削・堤防整備を行います。令和3年度は、遊水地の整備、河道掘削を集中的に実施し、令和4年度の完成を目指して事業の推進を図ります。
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②吉田川河川大規模災害関連事業【継続】
令和元年東日本台風に伴う洪水により、吉田川では堤防決壊等が発生するなど、流域全体で甚大な浸水被害となりました。このため、大規模氾濫被害の軽減に向けた治水対策を推進します。令和3年度は河道掘削を実施し、洪水時の水位を低減させます。また、掘削により発生した土については、河川堤防のほか、氾濫被害の軽減に資する盛土などに有効活用を図ることとしています。
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