北海道知事インタビュー

北海道知事インタビュー

感染症対策と社会経済活動の回復に全力を尽くす

 

北海道知事 鈴木 直道 氏

 

―― 新年を迎え、知事のこれまでの取組の成果を教えてください

鈴木 私は、知事に就任以来、北海道の確かな未来を切り拓くため、「ピンチをチャンスに」という視点で、新たな発想力や行動力を大切にしながら、公約の中心として掲げた「ほっかいどう応援団会議」をはじめ、本道の強みを活かした食や観光のプロモーション、胆振東部地震からの復興など、様々な施策に取り組んできました。

こうした中、2020年2月以降、本道は、全国に先行して新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、未知のウイルスへの対応に迫られました。感染者数が増減を繰り返す予断を許さない状況が続き、感染拡大地域における外出の自粛や飲食店等の営業時間短縮など様々な制限を余儀なくされ、社会経済活動に大きな影響が及びました。

この間、私としては、まず何よりも道民の皆様の命と暮らしを守ることを最優先に、国や市町村などと連携し、感染症への対応に最善を尽くしてまいりました。道民の皆様、事業者の方々には、長期にわたり多大なるご理解とご協力をいただいたことに、改めて感謝申し上げます。

一方、感染症との闘いが続く中にあっても、2020年にはアイヌ文化復興・発展のための拠点となる民族共生象徴空間「ウポポイ」がオープンしたほか、2021年には、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されるなど、本道固有の歴史や文化への関心が高まりました。そして、バーチャルという形式ながらアジア初の開催となったアドベンチャートラベル・ワールドサミットを通じて、北海道の自然・異文化体験・アクティビティの魅力が世界に紹介され、2023年のリアル開催内定にもつながるなど、本道が有する価値が国内外で大きな注目を集めました。

―― コロナ禍で痛んだ北海道の経済・雇用情勢の取り組みを教えて下さい。

鈴木 現在、感染状況が改善し、経済活動の回復の動きは見られるものの、今後の感染症の動向は見通せず、燃油価格高騰の影響なども加わり、本道経済は依然厳しい状況が続いています。

このため、道では、厳しい環境にある事業者の皆様の経営継続を図るため、制度融資の活用促進による資金供給の円滑化や、感染防止対策の強化に向けた取組への補助、専門家による伴走型の経営相談、さらには全道の幅広い事業者の皆様を対象とした特別支援金の給付など、さまざまな施策に取り組んでいるところです。

また、感染対策と日常生活の回復に向けた取組を両立することが必要であり、道民への消費喚起を促す市町村等が発行するプレミアム付き商品券に対する上乗せ支援や、「今こそ食べよう!北海道」キャンペーンの実施、さらには、「新しい旅のスタイル」の感染対策等を取り入れた「どうみん割」や「ぐるっと北海道」の再開、Go To Eat事業の延長など、感染状況を慎重に見極めつつ、観光や飲食などの消費喚起策を段階的に実施しているところです。

雇用の面でも、道内の情勢は厳しく、今後も、依然として予断を許さない状況にあることから、引き続き、国や関係団体とも連携しながら、雇用の維持に取り組むとともに、ジョブカフェにおいて、相談対応やWeb企業説明会を実施しているほか、離職を余儀なくされた方々の再就職を支援する座学・職場研修の募集対象の拡大や、人手不足業種への労働移動を支援する異業種チャレンジ奨励事業の募集人員の増加など、雇用対策の強化を図っているところです。

今後も、変化する経済・雇用情勢を踏まえつつ、こうした取組みに加え、国の経済対策も活用しながら本道経済の活性化を図ってまいります。

―― 強靱で持続可能な国土の形成(地域の安全に欠かせない建設産業の持続的発展の取り組み)について伺います。

鈴木 近年、「令和元年東日本台風」や「令和2年7月豪雨」など、毎年のように全国各地で大規模自然災害が相次いでいます。本道においても、2016年の連続台風や2018年の北海道胆振東部地震などにより甚大な被害が発生しているほか、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の発生も切迫しており、こうした自然災害から道民の生命と財産を守り、本道にとって重要な社会経済活動を維持するためには、防災、減災・国土強靱化の更なる推進が必要と考えています。

このため、道では「北海道強靱化計画」に基づき、住宅・建築物の耐震化や治水対策、防災教育の推進などハード・ソフト両面から、強靱化に取り組んでいるところであり、具体的な施策の推進方策である「北海道強靱化アクションプラン」を毎年度策定し、その着実な推進に努めてまいりました。

こうした中、国では、気候変動の影響により、頻発・激甚化する大規模自然災害や高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが今後一斉に老朽化する状況などに対応するため、本年度から「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に取り組んでおり、道においても、この対策を最大限活用しながら、あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」に加え、重大事故の発生を防ぐ橋梁・トンネル等の老朽化対策や災害に強い道路ネットワークの機能強化など必要性や緊急性の高いハード対策を着実に実施するほか、洪水ハザードマップの作成などソフト対策の充実・強化にも取り組んでいるところです。

また、本道の建設産業は、道路や河川など社会資本の整備や維持管理を通じて、自然災害発生時の対応や除雪など、道民の皆様の安全・安心な暮らしを守る重要な役割を担うとともに、地域にしっかりと根ざして地域経済や雇用を支えています。

一方で、就業者の高齢化や若年者の入職が進まないなど、人材確保が厳しい状況にあり、建設産業が今後も十分にその役割を果たしていくためには、担い手の確保・育成が重要であると考えています。

このため、道では、「北海道建設産業支援プラン2018」のもと、週休2日の導入や適正な工期の設定による長時間労働の是正、適切な賃金水準の確保など就業環境の改善などに取り組んでいます。また、教育機関と連携した高校生向けの講習会の開催や建設業団体と連携したイベントなども活用しながら、建設産業の役割や魅力を広く発信するとともに、建設業団体が独自に実施する人材の確保・育成の取組を支援しているところです。

今後とも、「北海道強靱化計画」に基づき、道民の皆様の生命や生活、経済を支える社会資本整備などを着実に進め、強靱な北海道づくりを一層推進するとともに、地域の安全・安心に欠かせない建設産業が持続的に発展していけるよう、安定的な公共事業予算の確保に努めてまいります。

ゼロカーボン北海道ロゴ

―― 最後に、新年に当たって道民の皆さまへのメッセージをお願いします。

鈴木 新しい年においても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への備えに万全を期すとともに、地域経済の再生を図ることが重要と考えており、感染症対策と社会経済活動の回復に向けた取組の両立に全力を尽くしてまいります。

徐々に日常を取り戻していく中で、大きなダメージを受けた観光や食産業などについては、コロナ禍以前の需要を回復するのみならず、道がこれまで培ってきたノウハウやネットワーク、データなどの財産を最大限活用して、新たな需要の獲得にも挑戦してまいります。

さらに、本道の価値を一層磨き上げるとともに、コロナ禍による人々の考え方や行動の変化を背景に、積雪寒冷や広域分散など、これまで本道のハンディとされてきた特性を新たな強みに転換しながら、脱炭素化やデジタル化といった社会変革の動きを的確に捉え、ポストコロナを見据えた「攻め」の視点を持って、国内随一の再生可能エネルギーのポテンシャルを活かした「ゼロカーボン北海道」や、ICTやAIなどを活用した活力あふれる北海道の未来社会「北海道Society5.0」の実現といった本道の成長・発展につながる政策を強化し、道民の皆様とともに、ポストコロナの新たな北海道をつくり上げていきたいと考えております。


鈴木 直道 すずき・なおみち
埼玉県出身。高校卒業後、99年4月東京都庁入庁。2004年法政大学法学部法律学科卒業(都庁に勤めながら4年間で卒業)。08年夕張市へ派遣。10年4月内閣府地域主権戦略室へ出向、夕張市行政参与。同年11月東京都庁退庁。11年4月夕張市長選に出馬、2期当選。19年2月夕張市長辞職。同年4月北海道知事選に出馬、当選。現在1期目。

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