インタビュー/北海道知事 鈴木 直道 氏

インタビュー/北海道知事 鈴木  直道 氏

新たな建設産業振興策として「建設産業ミライ振興プランHOKKAIDO」の策定を進める

―― 知事のこれまで(任期4年)の取り組みの成果を教えてください。

鈴木 2020年2月以降、本道は全国に先行して、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、私としては、まず何よりも道民の皆様の命と暮らしを守ることを最優先に全力を尽くしてまいりました。道民の皆様、事業者の方々には、長期にわたり多大なるご理解とご協力を頂いたことに、あらためて感謝申し上げます。

加えて、今年は、ウクライナ情勢に端を発した国際情勢の変化に伴う原油・原材料等の価格高騰をはじめ、円安基調などにより、道内経済は厳しい状況が続いたことから、大きな影響を受けている道民の皆様や事業者の方々に対し、物価高騰等の影響をできる限り軽減するため、各般の対策に迅速に取り組んできたところです。

こうしたリスクへの対応に取り組みながら、地域の課題解決に向けた「ほっかいどう応援団会議」の結成のほか、民族共生象徴空間「ウポポイ」のオープン、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産への登録、アジア初の開催となった「アドベンチャートラベル・ワールドサミット2021」の開催、さらには、北海道のアンテナショップ「どさんこプラザ」の首都圏、関西圏への新規出店など、北海道が有する食や自然、文化といった価値を活かした取組にも力を注いできました。

「ほっかいどう応援団会議」には、令和元年度末と比べ、企業・団体の方々は2倍となる約600団体、個人の皆様は4.6倍となる約13,000名の方々にご参加いただいているほか、ふるさと納税で、個人版・企業版とも、3年連続で日本一となりました。また、「どさんこプラザ」については、昨年度の各店舗の総売上が過去最高となったことに続き、今年度も新たに3店舗出店し、過去最高を更新する見込みであるなど、北海道を愛する多くの皆様からお力添えをいただくことが出来ました。

また、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「ゼロカーボン北海道」の実現に向けた取組や、全職員へのスマートフォン配付によるテレワーク環境の整備といった、脱炭素化やデジタル化など時代の変革を踏まえた取組も進めています。

さらに、再生可能エネルギーのポテンシャルが国内随一といった強みを活かし、北海道と本州を結ぶ送電と通信の2つの海底ケーブルの整備や「北海道データセンターパーク」の実現に向けた取組を推進するほか、国内最大の食料供給地域として、我が国の食料安全保障の強化に最大限寄与するなど、本道の発展のみならず、日本の成長にも貢献していきたいと考えております。

―― コロナ禍からの北海道の社会経済活動の回復への取り組みを教えて下さい。

鈴木 本道経済は、感染症の影響の長期化に加え、国際情勢の変化により、エネルギーや原材料等の価格や供給動向は見通せず、今後さらに厳しくなることが懸念されております。

こうした中、社会経済活動の回復を確かなものとしていくためには、感染状況の変化も踏まえつつ、地域や事業者の方々の声に真摯に耳を傾け、足下の影響緩和はもとより、将来の成長につながる取組をしっかりと後押ししていくことが重要と考えています。

道では、本年7月に設置した「北海道経済対策推進本部」を推進役とし、「コロナ禍における価格高騰等緊急経済対策」に基づく事業について、感染状況も注視しながら、国や市町村、関係機関とも密接に連携し、各般の施策の効果的かつ効率的な執行に努めてまいります。

今後も、地域の経済状況や支援ニーズなどの情報の収集・共有を図り、必要な取組の検討を行い、道民の皆様の暮らしの安心と本道経済の活性化を図ってまいります。

―― 北海道建設部の建設行政の取り組みについて教えてください。

大規模自然災害対策等

鈴木 近年、全国各地で地震や水害、土砂災害など自然災害が多発しており、北海道においても、平成28年には観測史上初となる1週間に3つの台風が相次いで上陸し、十勝地方を中心とした大雨による浸水被害のほか、平成30年には北海道胆振東部地震により大規模な土砂災害が発生しています。

また、今年は6月から8月にかけて道内各地で多数の被害が生じ、特に8月8日から9日にかけての大雨では、函館市や遠別町、中川町などにおいて24時間降水量の観測史上1位を更新し、また8月15日から16日にかけては、今金町や長万部町、奥尻町においても24時間降水量の観測史上1位を更新しており、河川の氾濫による浸水被害や道路の路肩決壊など、道内各地で被害が発生しています。

今後も、北海道では温暖化による水災害の頻発化・激甚化のほか、太平洋沿岸の巨大地震の発生に伴い津波が予測され、活動的な9つの活火山があるなど自然災害のリスクが高まっており、その中で道民の皆様の安全・安心な暮らしを守り、経済活動を持続するには、総合的な防災・減災や国土強靱化などの取り組みを強化する必要があります。

こうした中、道では、河道の掘削や既設ダムの利活用など、あらゆる関係者が協働し、流域全体で水災害対策を行う「流域治水」の取り組みを進めるほか、巨大地震に伴う最大クラスの津波に備えるため、「津波浸水想定」の設定や「津波災害警戒区域」の指定を完了した太平洋沿岸や日本海沿岸に続いて、オホーツク海沿岸においても今年度より津波浸水想定の設定に着手するなど、関係市町村と連携しながら警戒避難体制の整備に取り組んでいるところです。

今後とも、国や市町村、関係機関等と連携を図りながら、ハード・ソフトの両面での、防災・減災対策をより一体的・計画的に推進するなど、災害に強い北海道づくりに取り組んでまいります。

本道の建設産業支援等

本道の建設産業は、社会資本の整備や災害対応など、地域の安全・安心や経済・雇用を支える重要な役割を担っておりますが、就業者の高齢化や若年者の入職が進まないなど、厳しい状況が続いており、依然として担い手の確保・育成や生産性向上などの課題があるほか、脱炭素化、デジタル化などの社会変革にも対応することが求められています。

このため、道では、建設産業の持続的な発展を図るため、将来の担い手となる若者や子どもたちにとって、北海道の建設産業のミライが魅力あるものとなることを目指し、新たな建設産業振興施策として「建設産業ミライ振興プランHOKKAIDO」の策定を進めており、早急に解決すべき重点課題である「建設産業の担い手の確保及び育成」の解決に向けて、建設産業の「働き方改革」、「生産性の向上」、「魅力の発信」を3つの柱とした各種取組を展開してまいります。

―― 最後に、新年に当たって道民の皆さまへのメッセージをお願いします。

鈴木 新しい年においても、道民の皆様の命と暮らしを守ることに全力を注ぎ、感染症をはじめとする様々なリスクへの対応に万全を期すとともに、物価高騰等への対応など足下の影響を緩和しながら、将来の成長につながる取組を後押しし、道民の皆様の暮らしの安心と本道経済の活性化を図ってまいります。

また、脱炭素化やデジタル化といった社会変革の動きの本格化や、世界的な食糧需給を巡るリスクの顕在化を踏まえ、「エネルギー」「デジタル」「食料」の3つの分野への対応がより大切となります。

世界的に関心が高まっている脱炭素化に向けては、本道の強みである豊富な再生可能エネルギーを最大限活用することが重要です。その上で暮らしや生産性の向上、地域の活性化といった、次なる成長とその好循環につながるよう、「ゼロカーボン北海道」の実現に向けて、全庁一丸となって取り組んでまいります。また、ICTやAI、ロボットなどの未来技術を活用した社会の実現に向けて、ドローンの実証を進めるなど、地域課題の解決に向けたデジタル化の取組を加速します。こうした取組を支える本道と本州を結ぶ送電と通信の2つの海底ケーブルの整備や、洋上風力など再生可能エネルギーの供給拡大に取り組み、「北海道データセンターパーク」の実現につなげてまいります。食料安全保障の重要性の高まりに対しては、我が国最大の食料供給地域である北海道としての役割をより一層発揮できるよう、生産力と競争力の強化を積極的に進めてまいります。

来年は、国内外から大きな注目が集まるG7気候・エネルギー・環境大臣会合やアドベンチャートラベル・ワールドサミット2023、全国豊かな海づくり大会が開催されるほか、北海道ボールパークFビレッジも開業します。こうした好機を確実に捉え、本道の魅力や強みを国内外に向けて発信していくことが重要となります。道民の皆様とともに、直面する様々な困難を乗り越え、北海道の価値を一層磨き上げながら、活力あふれる北海道の実現に向けて、全力で取り組んでまいります。


鈴木 直道 すずき・なおみち埼玉県出身。高校卒業後、99年4月東京都庁入庁。2004年法政大学法学部法律学科卒業(都庁に勤めながら4年間で卒業)。08年夕張市へ派遣。10年4月内閣府地域主権戦略室へ出向、夕張市行政参与。同年11月東京都庁退庁。11年4月夕張市長選に出馬、2期当選。19年2月夕張市長辞職。同年4月北海道知事選に出馬、当選。現在1期目。

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