寄稿/中国地方整備局 三次河川国道事務所

寄稿/中国地方整備局 三次河川国道事務所

山陽と山陰を結ぶ峠交通の難所解消に向けて

―― 江府三次道路 一般国道183号鍵掛峠道路

 

国土交通省 中国地方整備局
三次河川国道事務所長 庄司 俊介

○はじめに

一般国道183号は、広島県広島市~三次市~鳥取県米子市を最短で連絡し、山陽~山陰を結ぶ幹線道路で、広島県及び鳥取県が管理を行っています。一般国道183号のうち、中国山地に位置する広島県・鳥取県の県境部は、平面線形や縦断勾配が非常に厳しく、特に冬期は積雪が1mを超える豪雪地帯でもあり、交通の難所となっていることから、早期の道路整備が望まれています。

一般国道183号鍵掛峠道路は、鳥取県西部と広島県備北地域を連結する地域高規格道路江府三次道路の一部として整備区間指定を受け、権限代行により国土交通省が直轄事業として事業に着手しています。この道路整備により、山陽と山陰の間の人流・物流機能の強化、冬季や異常気象時の安全性・定時性の向上、緊急輸送路の確保、地域間交流と観光産業の活性化などの効果が期待されています。

 

○一般国道183号 鍵掛峠の危険な現状

鍵掛峠道路の現道部は、急勾配や急カーブなどの線形不良区間が連続しています。そのため、大型車同士のすれ違いが困難な箇所が点在する交通の難所となっています。

 

また、急峻な中国山地の渓谷に沿っており、法面崩落や土砂崩れなどの災害が発生しています。

平成17年1月12日に発生した法面崩壊(庄原市西城町三坂)の際には、この復旧のために5日間の全面通行止めとなることもありました。(片側交互通行規制:6回/10年)

鍵掛峠付近には、異常気象時事前通行規制区間(連続雨量200mm以上、L=3.2km)や要防災対策箇所連続区間があり、早急の対応が必要となっています。特に、鳥取県日野郡日南町の多里地区においては、周囲の道路がすべて異常気象時事前通行規制区間であり、孤立する危険があります。さらに、広島県側の要防災対策箇所の崩壊などが重なると、広島県庄原市西城町の三坂地区の一部も孤立する可能性があります。冬期においては、積雪が1mを超える豪雪地帯であり、降雪や除雪作業の状況によっては、積雪路面を通行することがあります。このため、曲線部でのスリップや大型車のスタック等による通行止めが発生しています。

大型車とのすれ違い(左)、ヘアピンカーブを走行するバス(右)

○鍵掛峠道路の整備状況

上記の鍵掛峠の危険な現状の解消に向けて、鍵掛峠道路を平成17年度より事業化し、これまでに調査設計及び地元協議を進め、平成27年度より工事に着手し、今年度は改良工事や橋梁下部工事等を実施しています。令和7年度の開通を目標に、早期開通に向けて着実な事業の促進を図っています。

 

○鍵掛峠道路の整備効果

続いて、鍵掛峠道路の主な三つの期待される整備効果を紹介します。
一つ目は、交通の難所解消です。現道の極めて悪い平面・縦断線形を解消し、円滑な交通が確保されます。これにより特に冬季における交通機能を強化し、安全な通行と定時性の確保を図ります。

二つ目は、安全・安心な暮らしの確保です。災害に強い道路を構築するとともに、現道部の代替路線を確保することにより、異常気象事前通行規制による地区孤立の危険性の解消を図ります。また、道路整備による医療施設への連結強化により、より短時間での高度医療サービスの享受を可能とします。

三つ目は、地域交流の活性化です。鳥取、島根、岡山、広島の県境を越えた地域活動の連携を促進します。山陰・山陽の循環ネットワークの形成を図り、人、物流の交流圏域の拡大を図ります。また、観光資源へのアクセス向上により、周辺地域の活性化が期待されます。

○おわりに

鍵掛峠道路事業は、交通の難所解消により、安全・安心な暮らしの確保と地域交流の活性化に向けて、地域から大きな期待を寄せられています。一日も早い開通に向けて、鋭意、整備を進め、地域の期待に応えて参ります。

 

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