寄稿／中国地方整備局浜田河川国道事務所事務所長　前田文雄 │ 建設グラフ

1. 「まもろう石見」「つなげよう石見」「のばそう石見」

「まもろう石見」「つなげよう石見」「のばそう石見」

国土交通省中国地方整備局
浜田河川国道事務所事務所長　前田文雄

1.石見(管内)の概要

浜田河川国道事務所は、島根県西部の石見地方の内、大田市と江津市の市境から山口県境、広島県境に至る範囲を管轄し、北は日本海に面しています。
「いわみ」の名にあるように、山が海まで迫り、平地が少なく、災害が起こりやすい地形、地質で、降水量も多く、幾度となく洪水等に見舞われています。

2.主な事業の概要

○まもろう石見(河川事業)

当事務所は江の川、高津川の二水系の一級河川を管理しています。江の川は中国山地のほぼ中央を貫流して江津市において日本海に注ぐ「中国太郎」の異名を持つ中国地方最大の河川です。その流域は広島県・島根県に属し、流域面積3900km2(全国16位、中国地方1位)、幹川流路延長194km(全国12位、中国地方1位)となっています。高津川は、中国山地の西部を源流とし、益田市において日本海に注ぐ、流域面積1090km2、幹川流路延長81kmの河川です。全国水質調査結果では、4年連続して日本一(平成22年～25年)となり、令和2年度には再び日本一に返り咲くなど日本有数の清流として知られています。

江の川では、平成28年2月に策定した「江の川水系河川整備計画」に基づき整備を行ってきましたが、平成30年7月洪水、令和2年7月洪水、令和3年8月洪水と近年3度の浸水被害が発生しました。

そこで、江の川下流域を「緊急対策特定区間」に設定し、令和3年度から概ね10年間で事業費約250億円の重点投資による河川整備を実施しています。

また、河川管理者が主体となって行う治水対策に加え、河川流域のあらゆる関係者により、流域全体で協働して行う「流域治水」への転換を進めており、令和3年4月より国、県、沿川市町で構成する「江の川流域治水推進室」を設置して、地域と連携を図りながら治水安全度の向上を目指しているところです。

現在は、築堤や宅地嵩上げ、個別移転に加え、集団移転などまちづくりと連携し多様な手法をもって事業を進めています。

高津川は、平成27年5月までに堤防整備が概成し、現在、土砂堆積等による河道の流下能力不足対策として、益田市街地区間の河道掘削等の工事を進めているところです。河道掘削に際しては、貴重な鮎の産卵場や瀬・淵の保全等に配慮する必要があり、このため計画段階から学識経験者や漁協関係者・市民の方々の意見を伺い、地域と連携を図りつつ事業を進めています。