寄稿/浜松河川国道事務所 所長 名久井 孝史

寄稿/浜松河川国道事務所 所長  名久井 孝史

三遠南信地域の生活を支える三遠南信自動車道

―― 命と暮らしを守る道として

国土交通省 中部地方整備局
浜松河川国道事務所 所長

名久井 孝史


三遠南信自動車道

1.概要

三遠南信自動車道(国道474号)は、長野県飯田市から静岡県浜松市北区引佐町に至る延長約100kmの高規格道路として整備が進められています。中央自動車道と新東名高速道路を連結し、全国の高速道路網の一翼を形成するとともに、三河、遠州、南信州地域の交流促進や連携強化、災害に強い道路網の構築、地域医療サービスの向上に寄与し、地域の発展に資する重要な道路として期待されています。三遠南信自動車道は、現在、国土交通省が主として事業を進めており、長野県、浜松市が事業を担当する現道改良区間も含め全線の約6割の区間が開通しています。

このうち、浜松河川国道事務所が整備・管理する佐久間道路・三遠道路は、鳳来峡IC~浜松いなさJCT間が平成24年4月に、佐久間川合IC~東栄IC間が平成31年3月に開通し、現在は東栄IC~鳳来峡IC間の令和7年度開通を目指して工事を進めています。

2.整備効果

東栄IC~鳳来峡IC間は、区間の約8割がトンネル (計4本)で計画されており、これまでに1号~3号トンネルが貫通し、残る4号トンネルについても、7月末時点で半分程度の掘進が完了しています。また、8つの橋梁については、全橋梁で下部工が完成しており、今年度は上部工の架設を進めて参ります。

水窪佐久間道路についても、平成31年度に事業化され、測量、調査、トンネル、橋梁の予備設計、工事用道路の設計を進めて参りました。

今年の5月15日には、現地調査の本格実施に向けた事業進捗を祈念し、中心杭打ち式を開催したところであり、今後、用地買収に着手する予定です。

残る水窪北IC~水窪IC間については、浜松市が現道の国道152号の改良を行っており、現在橋梁の工事や防災工事を進めています。

左:国道152 号被災時の迂回状況第 右:三次救急医療施設への時間圏域の変化

3.効果

三遠南信地域は、事前通行規制区間が点在し、災害による通行止めも多く発生しており、災害に対し非常に脆弱な状況にあります。温暖化によりさらなる降雨量の増加が想定される中、三遠南信自動車道の整備により災害に対して信頼性の高い道路ネットワークを確保することが喫緊の課題となっています。三遠南信自動車道に並行する国道152号(浜松市天竜区)では、令和2年度の豪雨災害により約6ヶ月間の通行止めが発生しました。この際、三遠南信自動車道は、部分開通ではあったものの、災害時の代替路として機能し、リダンダンシー効果を発揮しました。

また、救急医療の面では、浜松市北部の水窪町・佐久間町周辺には第三次救急医療施設がなく、この地域から最も近い第三次救急医療施設である聖隷三方原病院まで60分以内に搬送することが困難な状況です。さらに、搬送ルート上には線形不良箇所や狭隘区間が多く、搬送時における患者への負担が大きくなっています。三遠南信自動車道の整備により、速達性・走行性が向上し、第三次救急医療施設60分カバー圏が拡大するとともに、患者への負担軽減などが図られ、地域の医療活動に大きな効果をもたらします。平成31年3月に開通した佐久間道路・三遠道路の佐久間川合IC~東栄IC間はすでに救急搬送に利用されており、搬送時間の短縮や走行性の向上による患者への負担の軽減に貢献しています。

地域活性化の面では、輸送時間の短縮、信頼性の向上等により、沿線地域の産業の活性化が期待できます。三遠南信自動車道が全線開通すれば、飯田市役所 から浜松市役所までの所要時間が現況の約200分から約150分に短縮され、地域の産業連携を大きく後押しすることになります。

4.おわりに

今後、三遠南信自動車道の全線開通やリニア中央新幹線の開業により、三遠南信地域だけでなく首都圏も含めた人の流動がより活発になることが期待されます。

私たちは、様々な面から地域を支え、そして、地域を未来につなぐために、三遠南信自動車道の早期整備に努めて参ります。

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