寄稿/国土交通省 中部地方整備局 木曽川下流河川事務所

寄稿/国土交通省  中部地方整備局  木曽川下流河川事務所

木曽川下流河川事務所の取り組み

国土交通省 中部地方整備局 木曽川下流河川事務所


1.はじめに

木曽川水系は、長野県木曽郡木祖村の鉢盛山を源とする木曽川と岐阜県郡上市の大日ヶ岳を源とする長良川、岐阜県揖斐郡揖斐川町の冠山を源とする揖斐川の三川を幹川として濃尾平野を南流し、我が国最大の海抜ゼロメートル地帯を貫き、伊勢湾に注ぐ、流域面積9,100km2の我が国でも有数の大河川です。地域では、これら3河川を木曽三川と呼んでいます。

木曽川下流河川事務所は、愛知・岐阜・三重の3県5市町に跨がる木曽三川下流部、支川の多度川、肱江川の幹線流路延長約79kmを管理しており、流域住民の安全・安心を守るための治水対策、河川管理施設の機能を維持するための管理、豊かで多様な河川環境の整備や保全、国営木曽三川公園の整備等を実施しています。

2.管内の主要な事業概要

【河川改修事業】

木曽三川下流部の治水事業は、江戸時代から行われてきており、ヨハニス・デ・レーケによる明治改修により、三川を完全に分流する河道の骨格が築かれました。その後、昭和34年9月の伊勢湾台風災害を契機とした高潮対策事業等の改修を経て、ほぼ現在の姿となりました。

沿川には、我が国最大の海抜ゼロメートル地帯が広がり、人口・資産が集積するとともに、日本経済を牽引する産業や物流ネットワークが形成されており、万が一、堤防が決壊した場合には、長期間浸水した状態が続くなど甚大な被害が発生するだけでなく、日本経済に大きな損失となる恐れがあることから、堤防強化等の事業を推進し更なる安全度の向上を図ります。

木曽三川下流部において、発生が懸念される南海トラフ地震に備え、地震に伴う河川堤防の沈下の抑制等を行い、津波等の浸水被害の軽減に向け河川堤防の耐震補強工事を実施するとともに、長良川において、河川整備計画の目標流量(戦後最大洪水)を安全に流下させるための河道掘削を実施するなど事業を推進しています。

【環境整備事業】

木曽三川下流部の豊かで多様な水際環境を再生するため、地域との協働により、ヨシ原及び干潟を再生し生物の多様性の回復を図っています。また、木曽川には船頭平閘門やケレップ水制の土木遺産や多様な自然環境などの魅力ある地域資源があり、これらを活用した「かわまちづくり」を支援しています。

【国営木曽三川公園事業】

当事務所では、中央水郷地区の『アクアワールド水郷パークセンター・大江緑道』や河口地区の『桑名七里の渡し公園』の整備を進めており、令和3年1月に桑名七里の渡し公園の住吉地区を全面開園しました。引き続き各拠点において整備・管理運営を進めて参ります。

3.木曽三川河口部の地震・津波対策

○地震・津波対策の必要性

・木曽三川河口部は、南海トラフ地震などによる津波の遡上が予想されています。
・濃尾平野は緩い砂層で覆われており、地下水位も高いことから、地震発生時には地盤の液状化により、堤防の変形・沈下の恐れがあります。
・また、我が国最大の海抜ゼロメートル地帯であり、地震により堤防が決壊すれば、長期間湛水したままの状況が続くなど、甚大な被害が予想されます。

○地震・津波対策の目的

・浸水被害のリスクが高い木曽三川河口部において、地震による河川堤防の沈下の抑制等を行い、浸水被害の軽減を図ります。

○木曽川水系河川整備計画における地震・津波対策の考え方

・地震後に堤防の沈下等が生じた状態で、津波による浸水被害の恐れのある区間について、地盤改良を実施します。
・地震による沈下の影響が大きい高潮区間の全区間において、堤防の天端盛土等を緊急対策として実施します。
・緊急対策を行っても地震後の堤防の沈下等が生じた状態で、近年の平均年最大規模相当の高潮による浸水被害の恐れのある区間について、地盤改良等を実施します。

○地震・津波対策の工法

実施する地震・津波対策の主な工法は以下のとおりです。
天端盛土:地盤の液状化によって沈下する堤防の高さを確保する。
地盤改良:堤体の液状化を抑制する。

 

○地震・津波対策実施区間

・木曽川水系河川整備計画に基づく、地震・津波対策の進捗状況(2020年12月末時点)。

4.木曽三川下流部広域避難実現プロジェクト

木曽三川下流部の高潮・洪水災害による犠牲者をゼロにすることを目的に木曽三川下流部の沿川5市町が集まり「木曽三川下流部高潮・洪水災害広域避難検討会」を平成25年に設立し、広域避難を実現するための条件及び解決すべき課題を抽出しました。それを受け、新たな組織の枠組みとして8市町村による広域避難実現に向けた組織「広域避難実現プロジェクト」を立ち上げ、令和2年8月に自主的広域避難情報の検討とその呼びかけについて「木曽三川下流部 高潮・洪水災害広域避難計画(第1版)」として策定しました。

5.おわりに

当地域では、昭和34年9月の伊勢湾台風以降、甚大な災害は発生しておりませんが、全国各地で近年激甚な水害が頻発しています。さらに、今後、気候変動による降雨量の増大や水害の激甚・頻発化が予測されています。

このような水害リスクの増大に備えるため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を計画的に進めるとともに、流域全体のあらゆる関係者が協働し、流域全体で水害を軽減させる治水対策、「流域治水」への転換を進め、ハード・ソフト一体の事前防災対策に取り組んで参ります。

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