路地裏問答【2021年8月】

路地裏問答【2021年8月】

路地裏問答 2021年8月号

 

中世期のペスト蔓延を思わせるコロナパンデミックで、すでに1年以上が経過した。ワクチン接種が始まった国もあれば、ワクチン不足で着手できない国もある。その弱味に付け込むワクチン外交などという、卑劣で浅ましい国際政治も見られ始めた。人間を個人レベルで分断し、互いに遠ざけさせるコロナ渦を機に、従来の社会システムの欠陥と綻びが表面化し始めている。それは日本も例外ではない。

この7月に、政府は4度目の緊急事態宣言を発令した。国民は「またか」と、ウンザリしている。一方で、病床数も医療スタッフもワクチンも依然として足りず、感染拡大に歯止めは利かない。それでも政府・自治体に出来ることといえば、外出の自粛要請、在宅ワークの奨励など、国民の協力要請ばかりである。

特に耳目を引くのは、飲食店への自粛要請で、営業時間の短縮、アルコール提供禁止など、業界にとっては致命的なものばかりで、その余波はさらにアルコール卸業者、酒造メーカーにまで及ぶ。しかも、要請を無視して酒類提供を続けるスナック、バー、居酒屋などは、金融機関にリークするとの脅迫にまで及び、国民の大批判を受けて、政府は慌てて謝罪の後に取り下げる有様。

飲食産業に限らず、多くの産業は業績がガタ落ちで、国民の失業率・貧困率もそれに連鎖して上昇。政府の要請を受け入れ、所得喪失の犠牲に国民が耐えているのに、政府・自治体による救済措置はほとんどゼロ。むしろ、経産官僚による給付金の詐欺横領、国税庁職員らによる酒宴が発覚。しかも、国民には外出による娯楽・レクリエーションの自粛を要請しながら、世界中の諸国民が首を傾げる中で五輪開催。

この政府は、何をしようとしているのか。とりわけ、飲食・サービス産業を狙い打ちしているとしか思えない自粛要請を盾にした営業妨害は、かつて根も葉もない公共事業批判に乗せられて、建設産業崩壊策に邁進した第二次小泉内閣から民主政権までの悪政を思わせる。とりわけ、国民の終身雇用率低下による所得水準の低下をもたらせた元凶は、後に人材派遣業・パソナ会長に就任する、第二次小泉内閣の竹中平蔵財務相による派遣労働法の改悪であった。

政治・行政の本来の機能・使命とは、国富を再分配し、不公平や格差を是正するよう利害調整を図ることだが、国民には所得を失ってでも自粛を要請しながら、セーフティネットで救護するでもなく、ただ徴税だけは行う。

「勤労」、「教育」、「納税」は、憲法に規定された国民の三大義務として、社会的コンセンサスを得ている。哀しいかな、この20年間に勤労所得水準が下がったのは、OECD先進国の中では唯一日本だけである。それでも生真面目な日本国民は、「勤労」によってGDP3位を死守し続けてきた。

ところが、物価上昇に追いつかない低所得国民の貧困化は進み、近年は向学心を抱きながらも高校を中退、大学進学を断念するなど、高等「教育」を諦めざるを得ない無念の若者が増えた。

かくして、国民はそれでも三大義務を全うしようと悪戦苦闘しているのに、政府は無策のまま課税だけは続ける。これは何を意味するのか。

近年、経済学者や評論家からは「創られた貧困」という言葉が発せられるようになった。つまり、国民の貧困原因は、怠業ではなく、政府が悪政によって誘導した結果であるという主張だ。その理論的バックボーンとなっているのが、財務省による赤字国債のロジックで、「国民一人850万円の負債」という詭弁である。実際に時給がこの20年で40~50%も上昇したEU各国の、政府年度予算による財政出動はGDP比30~40%に対し、日本はわづか10%に抑えられてきた。

このカラクリを知ったとき、こんな政府に「納税」する価値はあるのか甚だ疑問を感じざるを得ない。コロナは人間の価値観を覆しつつある。昨年来、太陽系の惑星配列の変化により、人類の価値観が大転換するとの予測が、ネットでは見られた。風水で言えば物欲・拝金主義の「地の時代」から、高い精神性を望む「風の時代」に移行したと言われる。

コロナは、いまや突然変異を繰り返し、独自の進化を続けており、新たなワクチン開発を続けたところで、いたちごっこにしかならない。この情勢下で、我々人類が生き延びるためには、従来の価値観を捨て、新たなライフスタイル、ワークスタイルを確立し、適応する以外にはない。その時、国民は三大義務の意義を、改めて個人レベルで問い直すことになるだろう。そして、その答えは今秋に予定されている国政選挙を以て、明白になるものと予測する。

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